i want,

どんどん大人になる中で、さとだけ19のまま止まっている。
今はまだそんなに年の差を感じないけど、10年後、20年後はそれもひしひしと実感するのだろう。

「やだなぁ。さとにおばちゃんって言われるの」

変わらないちょっと悪戯っぽい笑顔で、『おばちゃんになっちょるやん』と言うさとが目に浮かぶ。
ふっと笑って、あたしはゆっくりとその場を立った。

…「おばちゃん、これ、いつもの」

台所に立ったおばちゃんに、あたしはビニール袋を渡した。

「ごめんね、いっつも八つ橋で」
「あら~ありがとう。えぇのに気ぃ使わんくても」
「手ぶらで来ると、さとに怒られそうで」

そう言うと、おばちゃんは「食いしん坊じゃけぇねぇ」と笑った。

おばちゃんが入れてくれたお茶をいただいて、近況報告とか話してたら、気付いたら小一時間もたっていた。

「ごめんね、いっつも長居しちゃって」
「えぇよ。また帰って来たら顔出してね」

「皆が来てくれるから、覚も喜ぶわぁ」、そう言ったおばちゃんの言葉で、あたし以外の子達もちょくちょく来てるんだとわかる。それが、やっぱり嬉しい。

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