i want,


かがり火の灯りも、境内のざわめきも、祭り囃子も。


全てが夢の様。そして垣枝は、それをかき乱す。



あたしをかき乱す。




「…わからんよ」




わからんよ、これ。


遠くに行って欲しいのに、かき乱さないで欲しいのに、相反する様な感情が支配する。



近付きたい。

あの衝撃に、もう一度触れたい。

触れたらもう、二度と離したくない。

あたしの五感を全て支配する様な、あの狂気に近い感情。




…欲しい。

あの感情の全てを、形あるものにしたい。

あたしだけのものに、したい。





空を仰ぎ見た。

薄い雲が覆う高い月。

求めない方が、きっと幸せだ。



それでもあたしは、無駄に手を夜空に伸ばした。


空を切って掴んだのは、秋の祭りの艶やかな残り香。



ほんの小さな、予感。











< 66 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop