kiss
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隠れたい気持ち一心なのかしゃがみこんだまま中に入り、周りを警戒しながら私の隣に座った。


「ババ抜きしてたら時間過ぎててビビりましたよ」


苦笑いを浮かべながらそう話す彼は薄茶色の髪が印象的だった。


「そう」


もっと話を広げてあげたいけどそんな器用なことはできない。


「あの…」


おずおずとそう声をかけてきた彼はまるで子犬みたいな瞳で私を見つめてくる。

不覚にも可愛いと思ってしまった自分に驚いた。


「なに?」


威嚇をするつもりはないけど昔からフレンドリーな対応とかは苦手。


「名前、教えてください。2年生ですよね?」


私の上履きを指差しながら言われて、上履きのつま先の色で学年がわかったのだとわかった。

ちなみに1年は赤。

2年は青。

3年は緑。


「……片瀬、梨麻」


ぽそっとそう答えると彼は嬉しそうに笑った。


「俺は1年の柳 優河【やなぎ ゆうが】って言います。梨麻先輩」


「なに、柳くん」


柳くんに名前で呼ばれたことになぜかドキッとした。



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