【完】冷徹仮面王子と姫。
「……ねぇ」



 急に聞こえた声に、恭一は顔を上げた。


 次の瞬間、思いもよらない台詞が聞こえてくる事など、知る由もなく。



 いつになく真剣な表情にも、動じることなく。




「キス、して」




 ―――――

 ―――――――――…



 一瞬、何を言われたのか分からなかったのかも知れない。


 恭一の表情は、完全に固まりきっていた。



「あたしの事…好きだから、OKしてくれたんでしょ?ねぇ。だったら…してよ」



 少しずつ、焦りを露にする表情を目の当たりに。


 彼は気づく。自分の本音に。


 最早この行動は、逆効果だったとしか言い様がない。



 ……答えを、出させた。


 張り詰めていく空気―――



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