【完】冷徹仮面王子と姫。
「もういい!まだ、及川さんの事…っ!本当は好きなんでしょ!!?」



 走り去る背中。


 恭一は追いかけるでもなく、その場で考えていた。


 彼女のことでなく――一香の事を。


 迷っていたものが、ついに定まった。


 結局自分が誰を必要としているのか。



 ―――今更、だろうし。無理かも知れねぇけど。


 このまま言わずにいると、俺の方がどうにかなりそうだ。



 …本当、らしくないな。



 恭一が一人屋上に寝転がった時、後方から扉が開く音がした。



「……やっぱり」


「山浦か…」



 まるで普段から話しているような口調。


 しかしまともに口を利くのは―――初めてである。



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