【完】冷徹仮面王子と姫。
 あーちゃんを誤魔化すのは至難の業だと分かっている。単ににやにやしているだけなら放置プレイだけど、あからさまに隠そうとしてしまったから。



「べ、別にー…あは」


「一香」



 盛大につかれた溜息。


 そしてそこで気づいた。


 ここで教えれば、二人がメールできるようになるかもしれない。



「ねぇー、何なに何なのー?」



 非常に珍しく子供のようなあーちゃんに、あたしは言う。


 乙女心の複雑さというのを、客観視できずに。


 自分のことなら分かるのに。



 せめて迷いの「ま」の字だけでも浮かんでくればよかったのに。




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