【完】最期の嘘
「きっと礼治君には一生嫌われちゃうんだろうなー。汐ちゃん傷付けることになるし。」



優太は自嘲気味に笑う。



「ああ。まあ俺だったら傷付いてる隙にモノにしちゃうけど。」



夜の闇に響く篥の、意外とハスキーな優しい声に、優太はただ苦笑する。



この先、ずっと長い汐ちゃんの人生。俺のために辛い想いをするより、ちょっと傷付いてでも幸せな未来を掴んでほしい。



優太は、心の中にそんな想いを秘め、そして自分の愛情の蓋に鍵をかけた。



暗い闇。泣き出しそうなほどに愛を叫ぶ心を、優太は煙草の煙で押さえ込んだ。
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