【完】最期の嘘


外は依然、大雨である。



ザアーっと雨の降りしきるマンションの外に、細長いシルエットが一つ。



汐の部屋の明かりを、ただぼんやり見つめるのは……優太である。



濡れ、温度を失った頬には、大粒の雨が叩き付ける。



「なんだ、今頃、痛くなって来たっつうの…。」



その言葉は、この大粒の雨を指すのか、はたまた自分の心に対してなのかは分からない。



ただ、雨に濡れ、自分で切って長さの短くなりすぎた黒髪が、哀愁を漂わせていた。



優太の心は、汐よりも、ずっと、ずっと深い海の底、二度と温かくなることのない場所へ、消えてしまったのだ。
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