【完】最期の嘘
「うちの事務所のアーティストだけが知る、夏の風物詩。」



優太はニッコリと微笑み、汐にかかったベールを避ける。



「こんな綺麗な景色で、永遠を誓えるなんて、ロマンチックだと思わない?」



見た目に似合わずロマンチストな優太の言葉に、汐は頬を紅色に染めて微笑む。



「優太さん…ロマンチストとか似合いません。」



「いーの。バンドマンたるもの、ロマンチストじゃなきゃね。」



二人は互いを想い、見つめ合う。



やがて、その想いが重なるように二人の唇の距離はゼロになった。



唇を重ねた二人に、嘘で塗り重ねた想いなど、なくなっていた。



あれは、最初で最期の嘘だったのかもしれない…。
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