ずっと大好き…この恋は秘密 …


「なに?無視?」


何も言わないみのりに
沙紀が少しイライラした様子で
カバンからタバコを取り出した。


みのりの目が沙紀の手元で止まる。



沙紀の手に握られていたのは

みのりの…

見覚えのあるタバコ―――…



「…それ…」


みのりの言葉に沙紀が顔を上げる。



そしてみのりの視線が自分の手の中のタバコに向けられている事に気づくと

「あぁ」とニヤリと笑った。


「今日遼太んとこ寄ってから来たんだけど…

寝室にあったのを遼太がくれたの。

…遼太これ吸わないから」


得意気に笑う沙紀に
みのりの顔が歪む。


「あ、あとさぁ勝手に家とか上がんないでくれる?

あそこはあたしの家でもあるんだし。

キッチンもソファもベッドもあたしのものなんだから。

…もちろん遼太もね」



沙紀の言葉にみのりが奥歯を食いしばった。



悔しくて…悔しくて…


喉が…

苦しかった。



返事ができないみのりに
沙紀が満足そうに笑顔を向ける。



みのりは俯いたまま…

顔をあげなかった。



冷たい風が

2人に吹き付けてくる。



「とりあえず今日は忠告に来ただけだから。

遼太はあなたの事遊びだって。


…だってあたしがいるんだから(笑)」


余裕たっぷりでそう言うと
沙紀はヒールの音を駐車場に響かせながら自分の車に戻った。


大音量の音楽が車の外まで漏れていて耳障りだった。



沙紀の車が走り去った後も

みのりはそこから動けなかった。


突然の呼び出しだったため
コートも着ていないのに寒さも感じない。





時間が…


完全に

止まってしまっていた―――…








何も


考えられない―――…







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