ずっと大好き…この恋は秘密 …


セミロングの緩いパーマのかかった髪がふわりと揺れる。


27歳にはとても見えなかった。


「ごめんね、呼び止めて。

これからまた本屋さんでバイト?」


沙紀の張り付いたような笑顔に

みのりが真顔でうなづく。


色んな男の人達と付き合ってるわりには

笑いなれていないような不自然な笑顔に少し違和感が残る。



「…この人はただの友達だから誤解しないでね?」


沙紀がそう言うと隣にいた男がにこりと笑った。


みのりもなんとなく会釈を返す。


落ち着きがあって…

とても穏やかそうな人だった。


みのりの想像していた沙紀のイメージが少し崩れるほど…

優しそうな…『好青年』だった。



「ちょうどね、行くところだったの。

会えてよかった」


沙紀がもう一度嘘っぽい笑顔を作って笑う。






…この間もこんな風に

わざとらしく笑ってたのかな…


あたしが見られなかっただけで…





そんな事を思いながらみのりが返事をする。


「…あたしに何か話ですか?」


隣の車道を車がどんどん走っていく。


大型トラックが通り過ぎ2人の髪を揺らす。


赤信号で車が止まり
騒がしかった車道が静かになる。



しばらく黙った後


沙紀が口を開いた。






「遼太と…



…別れて欲しいの」








信号が青になり

一瞬静まり返った車道がまた騒々しくなる。





みのりと沙紀の間だけが


静かなままだった…







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