ずっと大好き…この恋は秘密 …
12..ずっと大好き…

不可解な行動



「おめでとさん」


年明けの初出勤でちんたら歩いていた浅井に後ろから渡辺が声をかけた。


「あ〜…おはようございます」


だるそうに返事をした浅井の背中を
渡辺が音がするほど強く叩いた。


「いってぇ…」


「若いんだからもっとしゃんとしろよ(笑)」


そう言って笑う渡辺に浅井が苦笑いする。


初出勤という事で
いつもは行われない朝礼が簡単に行われた。


教習中の注意点や今月末からまた来始める高校生の事を上司が手短に報告していく。



10分足らずの朝礼が終わって…

その直後だった。



まだ始まっていない教習所のドアが開いた。


8時前で教習生が来るよりずっと早い時間だったため

職員の視線が集まる。


一身に視線を浴びながら入ってきたのは―――…





その人物に浅井の顔が歪んでいく。




「…沙紀」


浅井を見つけてにっこり微笑む沙紀を

浅井が睨んだ。


「あの、どちら様でしょうか」


受付のパートのおばさんが沙紀に遠慮しがちに尋ねた。


その問いに

沙紀が笑顔で答える。


「浅井遼太の妻です。

主人がいつもお世話になってます」


ぺこりと頭を下げる沙紀の言葉に職員が浅井に目を移す。


「浅井〜

奥さんきれいだなぁ」


「今までなんで紹介しなかったんだよ」


そんな同僚の言葉に愛想笑いするのも忘れて

浅井が沙紀に向かって早足で歩き出した。


「…こっち」


そして沙紀の腕を掴んで建物を出た。



浅井が沙紀を連れてきたのは
いつか清水に連れられてきた教習所の裏だった。


「なんのつもりだよ」


掴んでいた腕を離して少し浅井が距離を開ける。


浅井の冷たい言葉に
沙紀が少しムッとして答えた。




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