365回の軌跡

傘の正体

外は相変わらず雨が降っていた。連日の様に降る雨は一種の嫌がらせの様にも感じる。仕方ないことだが。
季節は梅雨だった。雨の激しく降る白く滲んだ空を私は窓から見上げていた。
「沙紀~、もうすぐ出来るから待ってて! …あれ、おたまどこ?」
「下の戸を開けて右側の箸とか刺さってるとこ」
「あ、あったあった!」
今日は私の家に麻耶、遥が来ていた。達也と別れたことを知った2人が、手料理を作ってあげるということになったのだ。
友人達の優しさは嬉しかった。私は2人のキッチンに立つ後ろ姿に目をやり、思わず微笑んだ。サバサバした性格でいつも私を励ましてくれる麻耶、おっとりした感じだけど、とても優しい遥。この2人が私のホントの親友なんだな。
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