365回の軌跡
待ち合い傘
あれから数日、私はあの傘を持って街路に立つ日が増えた。何度も諦めかけた。あの人はたまたま出張でここに来てただけで、家は全く別の所かもしれない。ここで待ってることが無意味なんじゃないか。または私はあの人の顔を実は全く覚えてないんじゃないか? そういう考えが頭をよぎり、傘を放り投げたくなる。これさえ無ければ…。でも出来なかった。こんな高級な傘を借りておいて、返さないのは私の中で有り得なかった。昔から曲がったことは嫌いだ。男っぽいけど。
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