365回の軌跡
「今年の夏さぁ、2人で海行かない?」
既に時計は0時を過ぎていた。お酒は何杯飲んだか覚えていない。私は熱い顔を両手で抑えながら、
「私と?なんで?」
と聞いていた。
彼もかなり酔っている様だ。イタリアンレストランを出た時にはかなりしっかりしていた顔が今は赤く火照り、居酒屋のオレンジの照明が彼の輪郭をクッキリ浮き立たせる。
「え…なんか沙紀と行きたいなって」
私は少し照れている彼を可愛いと思った。
「いいよ!行こう!いつにする?」
私はこう言った時にハッキリ確信した。この人が好きだ。
「やった!じゃ行く日はまだスケジュールが曖昧だから後で連絡する。でも今年の夏に絶対行こう」
彼はそういうと小指を出してきた。
「…なに?」
「ゆびきり。昔からこれやらないと安心できなくて」
「何それ?子供っぽ~い」
とか言いながら私も小指を差し出す。彼の体に初めて触れた瞬間だった。
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