365回の軌跡
私は家の鍵を開けると、暗くて少し寒い部屋に入る。電気をつけてベッドに座り込む。私は慣れた手つきで携帯を取り出し、達也へ電話をかけた。
「…留守番電話サービスへ接続します」
またか…私は携帯を閉じるとそのまま寝転がった。
去年の末からだった。急に達也の対応が変わりだした。電話に出る確率が減った。メールの返信が遅くなった。返信が無いこともあった。当然会う回数も減り、いつしか達也がかなり遠い存在になった。最初は不思議だった。次は不安になった。麻耶や遥に泣きながら電話したこともあるし、達也に問い詰めたりもした。でも、何も変わらなかった。達也は優しかった。何を聞いても
「…ごめん、そんなつもりはないんだけど…」
で会話が終わってしまう。
でも今は…あるのは諦めと怒りだった。達也は好きだけど、今から昔みたいにやり直すのは難しそうだ。もう別れた方がお互いのためにも良いような気がする。やっぱり男っぽいのかな…私。
私は起き上がると風呂場へ向かいながら、達也に会ってから切ってない、長く伸びてきた髪を邪魔そうにかきあげた。
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