ロ包 ロ孝
「淳、手伝ってよ。胸がいつもよりキツイの」

「大方食べ過ぎたんだろう、ホラ」

 里美が胸を寄せている間にバトルスーツのチャックを上げてやる。俺達は宿を出て、雨をしのぐ為に入ったバスの待合所で、突入の準備をしていた。

「いよいよだわ。なんだか緊張するわね」

 ここからだと廃ホテルは目と鼻の先だ。いつもは大胆不敵な里美が、珍しく固くなっている。

「おいおい、里美がそんなんだと栗原に迄伝染しちまうぞ? ホラ」

 俺が指差した先に座っている栗原は、これ以上無いという位全身を震わせていた。

  ガタガタガタガタガタ

「栗原! そんなに震えてたら、待合所が壊れちまうぞ」

「むむむむむむ武者震いっすよ。らららららら楽勝っす!」

 それのどこが楽勝なんだ!

「暗視スコープは持ってるか?」

「だだだだ大丈夫っす」「ここに有るわ」

 本降りになってしまった雨は、精密機械に取って大敵となる。廃ホテルの中迄はビニール袋を被せて持って行く事にした。

「よし行くぞ!」

「あ、坂本さん」

「どうした?」

「震えが止まりました。……これ、栗原大活躍の兆しじゃないすか?」

「おお! 良かったな! でも余り気負い過ぎるなよ?」

 雨宿りをしていたバス停を後にしてホテル脇の土手を降り、俺達は初日と同じように展望ロビーから侵入した。


───────


「暗視スコープが無かったから、今日は怖かったわね」

「俺、3回転びそうになりました」

「これから先は殆んど室内だ。暗視スコープも使えるし、少しは楽になるよ」

「淳、賊の様子は?」

 里美に促され携帯の画面を確認する。

「おお……赤い所が多いな。かなり散らばっているみたいだ」


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