『縛』
「んじゃ、商談成立にしていい?」

「いいよ。
残りも、また持ってくるね。」

「ありがたいねぇ♪
まってるよ。
しっかし、もったいねーよなあ。
ほんとに聞かないの?」

サラに、数枚札を渡しながら
男が聞く。

「まあね。」

彼女も、それを財布に
なおしながら、答えていて。


「あの!


それ!


全部買うから!

計算して。」


彼が、段ボールごとストックに
運ぼうとするのをみて、
咄嗟にそういった。


「え?」


サラと店主が
俺のほうを見て絶句してる。

「あの、中を・・・

種類とか、確認しなくて
大丈夫?」

「いいんだ。早く計算して。」

小声で言った。

ちらっと、後ろを確認すると、
ギターケースを担いだ学生達が
入ってきたのが、見えた。


「あ。じゃあ・・
私は、これで。」

サラが、俺と店主に、
そう声をかけて、
傍を離れようとした。


「サラ、送ってやんよ。
ちょっと待ってな。」


思わず、手首を掴む。

昨日も確か・・・

こうやって引き止めた。


「昨日の話の続き。
途中だったでしょ。」

「え?・・・あ。」


何とか気付いたか?




 
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