『縛』
右肩に段ボールをかつぎ、
左手でサラの手首を掴み、
車に向かう。

「ちょっと、
歩くの早いし・・。
痛っ!」


自分の車の前で足をとめた俺に
サラが、勢い余って背中に
ぶつかり、文句を言ってる。


とりあえず、捕まえた。


「サラ、乗って。」

彼女を促し、トランクに
段ボールをおろした。

視界を邪魔する
眼鏡と帽子をとる。

「自分で帰れるし、遠慮する。」

彼女は、そっけなく、
そう言い切った。

「目立つんだから、
早く乗れって。」


絶対、逃がさない。



思いが強すぎて、
口調が強くなる。

助手席の扉を開けて、
半ば強引に、
サラを押し込む。


エンジンをかけて、
暖房をいれた。


「ほんっとに、強引ねぇ。」

彼女が、呆れていう。

「そう。強引で、わがままで、
性格も悪いんだ。俺。」

軽く受け流す。

「へえ。私と同じね。」

かえってきた返事に、
思わず、彼女の方をみた。


「私のほうが、上をいくわよ。
ほら、運転手は、
前を向きなさい。」

サラの形のいい指が、
頬に触れ、俺の顔を、
正面に押し戻した。



 

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