『縛』
冬場、閉館前の
アクアリウムは、
客もまばらで。

否応なしに、
青白い視界の中、
手摺りに腰かけ、
水槽にもたれ座る女性が
目に入る。


「何で泣いてるの?」


思わず、声をかけていた。

彼女が、ハッとした顔をして、
頬を指で触れて苦笑した。

無意識だったのか?


涙は迷うことなく、
同じ道をたどっている
ようなのに・・・

それにすら
気付いてなかったんだ。



 
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