逢瀬を重ね、君を愛す
途端に胸が熱くなる。


「”愛しい人、ずっと待ってる。約束のこの地で、また会える日を”」

「え…」


春香さんを見つめると、やさしく微笑んでいた。


「噂の帝の言葉。」

「…素敵、ですね」


ぎゅっと笛を握りしめる。

「でしょ!家に伝わる言葉でね!まだ続きがあって・・・」


ざわっと風が舞い、桜が舞う。
風に髪が靡き、香りがすべてを包み込む。


「”君の重荷にならないように。蛍に想いを託し、桜に秘密を託す”って…どうしたの、彩音ちゃん!」


片手に笛と巾着を握りしめたまま、一心不乱にあの大きな桜の根本を手で掘り返す。


――-蛍に想いを託し、桜に秘密を託す。


悠久の約束。


掘り進めるうちに、何かが指先にあたる。


「え、なにそれ?そんなのでてきたの!?」


土の中で、どれだけの時代を見てきたのだろう。
出てきた小さな箱。


「…櫛…」


年季が入って、ところどころ剥げてはいるが、見ただけでもわかる上等ものだ。
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