逢瀬を重ね、君を愛す

「か…薫?」

どこか懐かしい名前に胸がざわつく。
ぎゅっと手を握りしめると、後ろから春香の声が響いた。


「彩音ちゃん!おまたせ。」

「あ、はい。」


平静を装って、何かを持ってきた春香に近寄ると、少し自信気に手に持っていたものを見せてくれた。


「これ…は…」

「これは家の家宝にもなってる、笛と巾着よ。」


どこかつたない、お世辞にも上手いと言えない巾着と、高級そうな横笛。


「この笛は私の先祖が帝から賜ったものなの。それと一緒にこの巾着もね。」


震える手でその2つに触れる。



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