逢瀬を重ね、君を愛す
夜風に吹かれて桜の花びらが舞い上がる。
暗闇に薄い桃色が映える。
そして薫の容姿にぴったりの背景。
ジッと見つめていると、薫がこっちを見て軽く笑った。
「彩音、ついてる。」
「え?何が?」
「虫。」
そう言われて、彩音の思考は止まる。
そして理解した瞬間、叫んだ。
「無理ー!!やだやだやだやだ!!取って、取って!!」
ガシッと薫の腕にしがみつく。
「大丈夫だから。ジッとしてな」
「うん…!!」
そう言いながら薫の手が頭に伸びる。
そして不意に冷静になる。
――きょ…距離が…近い!!