逢瀬を重ね、君を愛す

夜風に吹かれて桜の花びらが舞い上がる。


暗闇に薄い桃色が映える。
そして薫の容姿にぴったりの背景。

ジッと見つめていると、薫がこっちを見て軽く笑った。


「彩音、ついてる。」

「え?何が?」

「虫。」


そう言われて、彩音の思考は止まる。
そして理解した瞬間、叫んだ。


「無理ー!!やだやだやだやだ!!取って、取って!!」


ガシッと薫の腕にしがみつく。


「大丈夫だから。ジッとしてな」

「うん…!!」


そう言いながら薫の手が頭に伸びる。
そして不意に冷静になる。


――きょ…距離が…近い!!


< 71 / 159 >

この作品をシェア

pagetop