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「だいちゃん電車来ちゃう!」

琴菜の腕時計を見ると、成る程5分も無い。

「げ、走るぞ」


慌てて改札を通り階段をかけ上がって、ちょうど来た電車に乗り込んだ。

「も、無理……」

琴菜を見ると軽く息を切らしている。

「体力ないな…」

そう言えば、

「だいちゃんみたいな化け物と一緒にしないでよ」

軽く睨まれ、化け物扱いされた。
「化け物って…。俺一応バスケ部員だから」

「そんなの知ってる。朝から走れるってとこが化け物なの!」

とか何とかくだらない話をしている間に降りる駅に着いた。

多くの人が電車から吐き出され、そのなかには自分達と同じ制服も纏った姿も結構見られる。


学校に向かって歩く間も琴菜はよく喋った。
昔から嘘や隠し事がある時はいやに饒舌になる。
今回は十中八九昨日のことだが…。

根拠なんていくらでもある。
まず琴菜が泣くなんて滅多に無い。
次に貧血で倒れたなら手首を捻るなんて出来ない。
極めつけは、琴菜のあの瞳だ。
あれは何か知っていて、それを隠そうとしていた。


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