王国ファンタジア【流浪の民】
「!」

 ドルメックはベリルの言葉に、少し顔を伏せた。

「特にセシエルは、そういうものとは無縁だ」

「え?」
「奴は決して、見返りを求めない」

 エメラルドの瞳がセシエルを見つめる。それだけで、この2人の絆の深さを理解出来た。

「……俺は、あんたに言われてどうしていいか解らないんだ」

「!」

 憎しみで生きてきた。それが力の源だった。なのに、それを否定されたら……

「別に否定した訳じゃないさ。それのみではいけない。と、言ったのだ」

「! ……っ」

 言葉が出ない。

「私がもし、親に捨てられたからと憎しみを燃やせばそれは、誰かに飛び火するだろう。憎しみの連鎖を生むだけだ」

 静かな瞳がドルメックをとらえる。

「お前が憎しみではなく、純粋に仲間を集めたい。と思うなら」

 討伐に成功したあと、再び私の処に来るがいい。

 意味深な言葉に、ドルメックは首をかしげた。


「集え戦士たち」完

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討伐編「いざドラゴンのもとへ」
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