王国ファンタジア【流浪の民】
「最後に1つ。大仕事が残っている」
「え?」

 ベリルの言葉に、一同は眉をひそめる。

「お前の荷物に手紙を入れておいたのだが。必要無くなったな」

「え? 手紙?」

「確か、王都にはマジックサークルがあったはずだ」

 そう言って、ベリルはスタスタと歩いていく。セシエルたちはその後に続いた。

 街の角、ひっそりした場所にそれはあった。移動のための魔法円。

 魔法を使える者にしか扱えないものだが、ベリルはその円の中心に立つと見守る4人にニコリと笑いかけた。

「すぐ戻るよ。しばらく待っていてくれ」
「……ってどこに行くんだよ!」

 セシエルの問いかけに、

「集落に」
「俺たちの集落に魔法陣なんて無いぞっ」

「ああ、先日戻った時に庭に描いておいたよ」

 なんだってぇぇー!?

 セシエルの叫びと共に、ベリルの姿は空の雲のようにかき消された。
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