王国ファンタジア【流浪の民】
 老人は溜息を吐き出し、ベリルの目を見据えた。

「いつでも帰ってくるがいい」
「そうしよう」

 荷物を積み終わり、2人は馬にまたがった。

「……」

 セシエルはパドメと2人の子どもを見つめる。

「頑張ってこいよー」
「必ず倒してね!」
「死なないでね」

 仲間から励ましの言葉が口々に発せられる。

 それに応えるように、手を挙げながら馬の歩みを進めた。

「……」

 その後ろ姿を、長老は眺めながら、

「2人が逃げ帰ったとしても、責めるでないぞ」

「! 長老……」

「ドラゴンになど、適う方がおかしいのじゃ。わしは、ドラゴンよりもあの2人の命が助かればそれでよい」
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