王国ファンタジア【流浪の民】
「蜘蛛の糸だ」
[……は?]

 ドラゴンは一瞬、間抜けな声を上げた。

[それは……どういう意味だ]

 問いかけられ、ベリルは目を細める。

「払いのける事は出来るが、すぐにまた目の前に立ちはだかる。そして気付かぬうちにまとわりつく」

[……]

 なんと上手い表現を……ドラゴンは絶句した。

「もういいか?」
[エ]

 どうしようかな……

 どんな答えでも殺すつもりは無かった訳だけど、なんかこのまま通すのも腹が立つ。

 言い負かされた形のドラゴンは、複雑な顔でベリルを眺めた。

[お前、肝が据わってるな]
「そうでもない」

 しれっと応える。

[私は人間から“智の竜”と呼ばれている]

 ベリルは『解っている』。というような顔をした。
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