王国ファンタジア【流浪の民】
「仲間の命を人質にした国なんかどうでもいい! ドラゴンを倒せばそれでいいんだろうっ」

 感情にまかせて、ベリルにぶちまけたドルメックは拳を強く握りしめた。

 俺は……なんだってこいつに話してしまったんだろう?

「……」

 ベリルは、そんな青年を静かに見つめる。

「確かに、国のした事は許されないものなのかもしれん。しかし、それほどにドラゴンの脅威はすさまじいのだと言える」

「勝手な事、抜かしてんじゃねぇよっ」

 今にもナイフを持ち、ベリルに攻撃をしかけそうな勢いだ。

「ほら」
「えっ!?」

 ベリルは彼の目の前に核石を示し、思わず差し出した手に乗せた。

「……」

 呆然と、そのエメラルドを見つめる。

「いいのか……?」

 ドルメックは声がうわずった。ベリルは小さく笑うと、

「大切な仲間なのだろう? だったら私が持つべきものではない」
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