王国ファンタジア【氷炎の民】
「いいんですか?」
「何がだ?」
「だって、サレンス様、僕がいないと何もできないでしょ。食事だって、身支度だって。第一、王都にはどうやっていくつもりだったんですか? 僕が雪ぞりの手配をしなかったら、徒歩で行くつもりだったんですか? 大体、王都はどっちにあるかご存知なんですか?」

 たたみ込むように言い募る少年に、さすがのサレンスも言いよどむ。

「いや、それはあの」
「やっぱり、何にも考えてなかったんですね」
「あははは」

 笑ってごまかすサレンスにあきれ顔の少年。

「ったく、これだから」

 僕がしっかりしないとと、レジィはつぶやく。

(この調子なら、どうやってドラゴンと戦おうとか何にも考えてないんだろうなあ。いいとこ、適当に焦がすか、凍らすかくらいしか。ドラゴンがその程度で倒せる相手ならいいけど。ちょっとまずいかも。万が一にも<サレンス様>が目を覚ましたら……。長老たちの人選も安易だよなあ)

 従者役は苦労が絶えない。

「で、レジィ先生、王都はどっちだ?」

 思わずレジィはそりから落こっちそうになった。

「やっぱり、適当に走らせてたんですね?」
「ばれたか」
「ばれたか、じゃないですよ。まったく。ほら、あっち。南に山脈が見えるでしょう」

 少年が指差した先にはぼんやりと青い山並みが見える。

「そこを目指してください」
「また適当な指示だな」
「貴方に言われたくないです」
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