愛の楔
すっと目を細めると、賢は、自分の後ろから黒い鞄を取り、俺の前に差し出す。
それは、大きなものではなく、丁度ノートパソコンが入るくらいの大きさだ。
「それは」
「お嬢の持ち物です」
「中身は」
「重さからして、パソコンかと」
「?確かめてないのか」
隅々まで調べ上げたくせに、何故だと賢に問いかけると、賢は、それが、と言葉を繋げる。
「開けられないんです」
「開けられない?」
聞き返すと賢は頷いた。
俺は目の前の鞄に手を伸ばした。
それは、布ではなく、ケースで、鍵がかかっていた。