薔薇とアリスと2人の王子
アリスは落ち着いた声で言った。
「大丈夫よ。見た目は恐ろしい野獣だけど、本当は王……」
「人(野獣)は見かけによらないですよ、お姉さん!」
“本当は王子”って言うつもりだったアリスの言葉尻がつぼんだのは、カールに口を塞がれたから。
さて、クララはどうしようかと悩みはじめた時、階段からあの野獣の声だ。
「来たのか娘! 早くこちらに来い」
びく、とクララがわなないて、玄関の扉を閉める。
ゆっくり階段のとこに歩んでいった。より近付くと明かりに照らされた野獣の姿がクララの瞳に飛び込んできて、さらに彼女は怯えた。
「――お前は…!」
「?」
震えるクララを前にして野獣は何やら驚いていた。
しかしすぐに険しい表情に戻ってしまったよ。
「……名は何という」
「ク、クララ。クララ・ベートヴェン」
「――そうか……」
野獣はランプをクララに渡すと、1階の部屋で適当に今夜は過ごすように言った。
すっかり怖じけづいてしまったクララは、無言で頷く。