薔薇とアリスと2人の王子

 普段はひとつに束ねてある赤髪がベッドのシーツに散って、なんだか凄い光景だった。
 ほぼうつ伏せ状態で寝ているもんだから、イヴァンの顔は見えない。
 彼を起こそうとしたアリスをカールは咎めた。

「無駄だよアリス。兄さんは人に起こされては起きない。自分から目を覚ましてもらわないと起きないんだ」
「どこまでも唯我独尊なのね……」

 イヴァンが上半身裸で寝ている事にもアリスは呆れて、カールを連れてさっさと部屋を出た。
 ちなみにイヴァンが起きたのはそれから3時間後だったよ。


  < 5 >


 その日の昼、ひとりの小人が3人の部屋にやって来た。

「客人方、私たちは仕事に出るので留守番を頼みます。シャルロッテも家を出るそうなので」

 そういう小人をじっと見つめてアリスは怪訝そうに言う。

「失礼だけど……あなたはハンス何? ハンスA?」
「Dです。ハンスD」

 何しろ小人はみんな同じ顔だし、同じ木こりの恰好だ。アリスたちに見分けがつくはずないさね。


< 55 / 239 >

この作品をシェア

pagetop