薔薇とアリスと2人の王子
そのままウェンディはアリス達の前でパンを切りはじめた。
「ごめんなさい、貧乏でこんなものしか無くて……」
「いいのよ、気を遣わないで。私たちお腹いっぱいだから! ねっ」
そう言ってイヴァンとカールに同意を求めたアリス。
本当は2人ともお腹空いていたんだけど、アリスが恐かったんで頷いた。
「お姉ちゃん、今日は遅かったから寂しかったよ!」
ピーターがウェンディに抱き付く。ウェンディは苦笑しながら弟の頭を撫でた。
「両親が不在のせいか甘えん坊なんです」
「結構なことだな。どこかの馬鹿弟もこれくらい可愛げがあればいいんだが」
そう言うイヴァンの視線はしっかりとカールを捉えていた。けどカールはそんな兄の視線は華麗に無視だ。
この馬鹿兄弟が仲良くても気持ち悪いわ、と思ったアリス。でもピーターが甘える様子はとても可愛らしかった。
「もう13歳だからそろそろ男らしくなって欲しいんですけど」
と、ウェンディ。
「ピーターは13歳? 私と一緒だわ。ウェンディさんは?」
「16歳です。でも学校にも通っていないから勉強は全然。文字は読めますけれど」