薔薇とアリスと2人の王子

 金髪の男のニヤついた顔から逃れたくて、ピーターは来た入り口に戻ろうとしたけどそれは叶わなかった。
 男がピーターの細い腕をしっかりと掴んでいたんでね。

「嫌だ、こんな所じゃ飛べないよ! お姉ちゃんの所に帰してよー!」
「元気がよくて何よりだ。――ああ、紹介が遅れたね。私はフランツ・アーベルだよ」

 男・フランツは縦長の顔をかしげて、ピーターに微笑みかけてさ。
 成す術もなく、ピーターはフランツによって奥の部屋に連れていかれてしまったんだ。

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「見つけたわ! 研究所よ!」

 一方その頃、アリス達はピーターを追って研究所に辿り着いていたよ。
 研究所の場所は街の住民に聞いてすぐに分かった。
 怪しげな研究所が森の中にあるっていうんで、密かに有名だったんだ。

「どのように侵入しましょう、わたし達まで捕まるわけには……」

 ウェンディがおさげをいじりながら言った。胸の前で両手を不安げに握り締めている。
 それに応えて明るく言ったのは、カールだ。

「研究員のフリとか!」

 しぃん、と沈黙。


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