クロスロード
だからさ、とせーちゃんの耳元で呟き更に身体を密着させる。
見ないようにしててもどうしたって目に入ってくる光景に思わず目を背けた。
背けたのが右だったため、そっち側に座っていた美鈴さんとバッチリ視線が絡む。
薄暗い空間なのに、それでもハッキリ分かるくらい彼女の頬は赤く染まっていた。
「……な、仲いいのね…」
ぼそっと囁く美鈴さんに何の返事もできない。
すみません部員仲間なんです、とは口が裂けても言えない。
繰り広げられる甘い空気がこっちまで流れ込み、眉間のしわがどんどん刻まれていった。
「……目のやり場に困りますけどね」
せっかく話題の純愛映画だったのに。
久しぶりに映画を見るからさり気なく楽しみだった、のに。
迷惑カップル……部員仲間に妨害され、映画の内容など一つもインプットしないまま、気づいた時にはスクリーンにエンドールが流れていた。