クロスロード
私達の間に恋人みたいな甘い雰囲気はない。
ましてや婚約者、なんて、誰が信じてくれるんだろう。
……私だけなのかな。
寂しいって思うのは、私だけかな。
「聞いてる?」
「……あっ、は、はい」
……って、また敬語使ってる……
翠君は静かに本を閉じて本棚へ戻す。
背中を本棚へ預けたまま、顔だけ私に向けた。
「あの……もう、生徒会終わった?」
「終わったけど」
「、だったら……」
一緒に、帰ろうよ。
その一言を言いたいのに、喉につっかえて出てきてくれない。
と、言うか……仮に今誘っても一緒に帰ってくれる確率ってあるのかな。
翠君の気持ちを無視して誘いに来た今、ようやくそっちの不安が見えてくる。
―――だけど
その言葉を言うよりも先に
身体を抑えることができなくて。
一歩、また一歩と足を踏み出し、翠君との距離を縮めていく。
二人の間が僅か30センチになった時、彼のブレザーの裾をくいっと掴んだ。