クロスロード

そう、言ってみたけれど返事はなし。

聞こえないのかな。は、入ってもいいかな……


なんて迷ってはみたけどドアノブに手を回している自分がいる。


私、どれだけ彼に会いたいんだろう……


キィ、と床と擦れる音。本の独自の匂い。

パタン……静かに閉鎖された空間で、辺りを見渡し彼を捜す。


天井まで届くほどの本棚。その中にビッシリ詰められた本。

人一人通るのがやっとなくらい細い本棚の間を歩いていると―――、



「……っ、翠(みどり)君!」



茶色の髪にすらっとした身体。

本棚に寄りかかりながら薄い本を眺めている。


私の声に反応し、本から目を離してこっちを振り返った。



「何してんの」



静寂な部屋に透き通るテノール。


今思えば声を聞くのも久しぶり、だ。

前に喋ったのっていつ?声を聞いたのっていつ?

< 19 / 251 >

この作品をシェア

pagetop