クロスロード
そう、言ってみたけれど返事はなし。
聞こえないのかな。は、入ってもいいかな……
なんて迷ってはみたけどドアノブに手を回している自分がいる。
私、どれだけ彼に会いたいんだろう……
キィ、と床と擦れる音。本の独自の匂い。
パタン……静かに閉鎖された空間で、辺りを見渡し彼を捜す。
天井まで届くほどの本棚。その中にビッシリ詰められた本。
人一人通るのがやっとなくらい細い本棚の間を歩いていると―――、
「……っ、翠(みどり)君!」
茶色の髪にすらっとした身体。
本棚に寄りかかりながら薄い本を眺めている。
私の声に反応し、本から目を離してこっちを振り返った。
「何してんの」
静寂な部屋に透き通るテノール。
今思えば声を聞くのも久しぶり、だ。
前に喋ったのっていつ?声を聞いたのっていつ?