アリスとウサギ

 ウサギもそんな顔をするのかという発見。

 やはり彼の一番にはなり得ないという確信。

 見ていられなくてすぐに二人から目を逸らし、氷が溶けて分離したカクテルを口に入れた。

 薄くて美味しくない。

 一口飲んでため息をつけば、直人の優しい言葉が耳に入ってくる。

「大丈夫?」

 背中に温かいものを感じた。

 心配した直人がさすってくれているらしい。

「大丈夫です。だいぶ落ち着きましたから」

 大嘘をついて微笑めば、そっかと言って手は離れていった。

 早苗やもう一人の女子はそれぞれ男と話している。

 ウサギはアヤと話している。

 アリスはやめておくよう言われた直人を、神か何かに与えられたような気になった。

 アヤへの嫉妬が意地を張りたい欲求を助長する。

「直人さんって、優しいんですね」

 アリスはウサギに見せつけるつもりで、直人との距離を詰めた。

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