アリスとウサギ

「なあ、アリス。お前、熊谷に何言われたの?」

 寝そべったままウサギは視線を向けた。

 それにドキッとしてしまうこの体質は、どうにかできないものだろうか。

「お金払うから、あんたを家に戻すの手伝えって」

 ヘッと吐き捨てるように笑った彼は、ごろんと寝返り。

 チラ見えする腰がどうにも目を引く。

「ったく。やることがきたねーんだよ、あいつらは」

「あたしもそう思う」

「あーあー。お前は巻き込みたくなかったのに」

「不可抗力でしょ。それとも、他の女なら良かったってこと?」

「……他の女って……はあ……」

 ため息をつきながら起き上がったウサギは、長めの髪をグシャグシャと掻き乱した。

「あいつにどこまで聞いたの?」

「大雑把かつ全体的に、かな」

「ったく、俺のことは全部他人から聞くんだな」

「あんたが自分で話さないからでしょ?」

「……そうだな。間違いねえ」

 ウサギはバツの悪そうにフローリングのどこかに視線を泳がせた。

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