アリスとウサギ

 よりを戻して数週間、あまりにも早い彼の決断。

「あの、返事は?」

 戸惑っているが、不思議と迷いはない。

 言葉にできないから、呼吸を整えてから首を一度だけ縦に振った。

 すると、ウサギは緊張が解けたようにぐったりとため息をつく。

「みのさん張りに溜めんなよ。マジ、死ぬかと思ったぜ」

「だって……」

「いやいや、大変なのはこれからだぞ」

「え?」

「だって、俺だぜ? 絶対反対されるだろ」

「ああ、かもね」

「フォローしろよ……」




 例えば名前が珍しかったら。

 自分の名前と、繋がりがあったら。

 それだけでその人が特別に思えたり、運命を感じたり。

 本当に特別になったり、本当に運命の相手だったり。



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