アリスとウサギ

「嘘っ……」

「嘘じゃねーって」

 アリスは目をパチクリさせて、じっとその部分を見つめる。

 薬指に光る、その何かを。

「えっ、ちょっと、何これ」

「見てわかんない?」

 やけに光を反射したがるその物体を確認するごとに、アリスはパニックに陥った。

 ウサギはその様子を楽しむかのようにずっと笑っている。

「いつの間に?」

「寝てる間に」

 ウサギはアリスの左手にキスをして、指輪を見せるようにアリスに向けた。

 また、キラリと光る。

 ウサギの唇が、熱い。

「お互い卒業したら、結婚してください」

 アリスの目からも、キラリ。

 驚きが勝って、何も言えなかった。

 こんな急な展開、あり?

「……何か言ってよ。俺、一世一代の大仕事したんだけど」

 急に不安な顔をしたウサギ。

 しかしアリスはただボロボロ涙をこぼした。


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