セツナイロ



街灯が小さな灯りをポツポツと道に落とし、照らしていた。



2人の手はするりとほどける。
あたしの家の前。


「じゃ、また明日。」

「うん、バイバイ。」


小さく手を振る。

ニコッと笑いあたしに背を向け歩き出すユウ…。




あたしもそろそろ家に入ろうかと思ったその時、突然ユウは足を止めた。


そして無言であたしの前まで早足で戻り、そして言った。



「ごめん
忘れ物した。」

「忘れ物?」

なんだろうと首を傾げるあたしの腕を掴み、引き寄せた。


「そう、忘れ物、な。」

チュッと微かな音をたて、重なる唇。


瞬時に赤面するあたしをクスリと微笑みながら、満足気な彼。

「危うくキス忘れるところだった。」



そう言った彼は手を振りながら街灯が薄く照らす道へと消えた。





あたしの心臓はドクドクと、今にも壊れるんじゃないかってぐらいに激しく脈を打っていた。


あたしは、もしかしたらユウを好きになりかけてるのかも知れない。


なんて錯覚に堕ちながら、あたしの心はユウ色に染まりつつあった。





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