Rainbow Love Story [短編集]
―その日から、私は香夜さんだけを見てきた。
だから、物心ついて、香夜さんと結婚する運命にあるって知ったときには、本当に嬉しかったの。
それなのに…。
『…っあ。香夜様、だめですっ…』
『大丈夫大丈夫。誰も来ないよ…』
『でもっ…』
「―香夜さん?」
私が声を掛けた瞬間、少しびくっと反応する。
婚約のことは、香夜さんにとっては、そうじゃなかったみたいで。
「…あぁ、未緒。お父様との話は済んだ?」
迫られていた召使いはすぐに部屋を出ていって。
香夜さんは、何事もなかったかのように話しかけてくる。
「えぇ。特に大した話じゃありませんでした。」
私も、知らないふりをして、笑顔で答える。
「そう。それは良かった。」
そう言って、優しく微笑む。
そんな風に微笑まれても、苦しいだけなんだけどね?
だけどこの笑顔が、私は大好き。
色素の薄い目も髪も。
真っ白で透き通るような肌も。
優しい所も。
…誰とでも、その…打ち解けられる所も。