幸せのカケラ
逆プロポーズ
「私、長生きするから。だからあなたは私よりも先に逝ってね」



昼下がりの日曜日。

ショッピングモール内の小さなオープンカフェ。


突然の君の言葉。




思わず、口に近付けかけたコーヒーカップを止めた。




「……それは」


どんな意味?





「あなたは私より長生きしてはダメ、私よりも先にお墓に入らなきゃダメ」




君と付き合って二年。


しかも今日は、二年目の記念日。



二年前の今日、僕達は付き合い始めたんだ。





なのに、いきなり先に墓に入れとは……。






君は気が強いタイプ。

喧嘩でも、決して先には折れない。


いつも先に折れて謝るのは僕の役目。





だからと言って、命まで先に折れろと?







「ちょっと待って、意味が分からないんだけど」


本当に分からない、全く。






君は細くて白い指先に、綺麗に巻いた毛先を絡ませながら溜め息をつく。




「ダメなものはダメ」



押し強いな。

今更だけど。




「どうしてダメなのか分からないよ。第一、僕自身が寿命を決められないじゃないか」



神のみぞ知る、だ。

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