ハツコイ☆血肉色
リビングに戻るなり、僕はキッチンへ向かった。

冷蔵庫からチーズケーキを取り出し、ケーキを切るためのナイフを探していると、女がキッチンに入ってきた。


「なんか手伝う? あ、ケーキわたしが切ろっか?」

「大丈夫だよ、手伝うほどのことでもないから」

「うん、なんか一人でくつろいでるのも悪いなーと思って。うわ、冷蔵庫めちゃくちゃ大きい。うちにもこれくらいのが欲しいなー」


女は冷蔵庫を開けようとした。


僕は掌を叩きつけて、そのドアを閉めた。


「わ……」


不意をつかれて思わず乱暴に振る舞ってしまったが、僕はすかさず笑みを作り、その場を取り繕った。


「いいから、いいから。ユリカちゃんは、あっちでくつろいでて」

「う、うん。わかった」


女は釈然としない顔でキッチンを出ていった。


冷蔵庫にあるものを見て、嘔吐でもされたら面倒きわまりない。


それにしても、と僕は思う。

無作為とはいえ油断ならない女だ。

くだらない余興はさっさと済ませて、早いところオペに取り掛かろう。
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