ハツコイ☆血肉色
★6 円城寺
女の手を引いてオペ室へ向かう。


ほの暗い廊下を黙然と歩きながら、僕は身震いするほどの興奮に襲われていた。


足を一歩踏み出すごとに、止めどなく活力が溢れ出てくる。

細胞が活性化し、神経は研ぎ澄まされ、血液が沸き立っている。

体感できるほどに、脳内ホルモンが大量に分泌されている。


ようやく、この時が来た。


僕は一度大きく息を吸い込み、ゆっくりと静かに吐き出した。


浮き立つのはまだ早い。

気を鎮めて平静を保たなければ、ともすると相手に付け入る隙を与えかねない。

まずは術前処置を確実にこなさなくてはならないのだ。


首筋にメスを突き刺す。

頚動脈を切断する。

飛沫が上がる。

一〇秒後に絶命。


単純きわまりない作業だが、滞りなく適切に処理しなければ不測の事態だって起こり得る。

万一にでも、足をすくわれるようなことがあってはならない。
< 22 / 33 >

この作品をシェア

pagetop