ハツコイ☆血肉色
ふと、左手に湿り気を感じた。

握った女の掌が汗ばんでいる。

女のほうを振り返ると、見るからに顔を強張らせていた。


「緊張してる?」

「う、うん。それはまあ……」

「僕もだよ」


久しぶりのオペであることのみならず、これほどの上物との巡りあわせは、そう滅多にあることではない。

過剰に意気込んでしまうのも無理はなかった。


僕は脱衣所のドアを開けると、念のために室内を素早くチェックした。

清潔な状態で整頓され、浴室へのドアも閉まっている。

問題ない。


浴室に常備されたオペセットは、先立ってメンテナンスを終えたばかりだ。

何一つ手抜かりはない。


「さ、服を脱ごう」

「なんかちょっと、いきなりすぎない? あはは……」

「そう?」


またか、と内心辟易するが、顔には出さない。

女という生き物は得てして、裸になるまでのプロセスに拘泥する。

肩を抱き寄せ、耳元で求愛の言葉を囁き、キスをする。

あいにくだが、そんな面倒なことには付き合っていられない。

そもそも、もうじきただの肉塊に成り果てるものを愛せるわけがない。
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