窓に灯

「ちょっと……ね。打ち合わせとか、色々あって」

 困ったように笑った恵里は、そのまま風呂場へと消えていった。

 俺はカチンコチンに凍り付く。

 何か隠しているのがイヤでもわかったのだ。



 恵里があの男に触れられたのではないか。

 不安は煽られてしまった。

 隠したのはなぜだろう。

 そんなの、考えなくてもわかる。

 何かやましいことがあるからだ。

 怒りとか悲しみとか、そんな感情を押し退けてやってきたのは、焦り。

 俺は風呂から出てきた恵里を、いつもより乱暴に抱いた。

「ちょっと待って、まだ化粧水つけてないっ」

「無理、待てない」

 ヤツの痕跡があるかもしれないと、体の隅々までチェックしながら。

「灯り、消して」

「やだ。それじゃ恵里が見えないだろ」

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