窓に灯

 恵里は俺の女だという実感が欲しい。

 焦るあまりに労らない俺を、恵里はそれ以上文句を言わずに受け入れる。

「好きって言えよ」

 俺はついつい言わせたがる。

「好きだよ、歩」

 言わせる時くらいしか、言ってくれない。

 恵里自ら好きだと言うのを、ほとんど聞いたことがない。

「それ、ホントかよ」

 情けない俺が自嘲の笑みを浮かべると、恵里は息を切らしながらうっすら涙を浮かべていた。

「ホントだよっ……好きだもん……」

 じゃあ、あの男は誰なんだよ。

 去年の失敗が脳裏をよぎり、どうしても聞けない。

 例えそれがやましい男であっても、恵里を手放すつもりはない。

 なぁ、恵里。

「俺も、好き……っ」

 そう言ったとき、恵里の目から涙がこぼれた。

 焦りと苛立ちに我を忘れていた俺も、それを見て労れなかった自分を反省。

 だけど、謝ることはしなかった。

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